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記事No.22838(No.22832へのコメント) トピック(元記事及び応答)
タイトル 金貸しビジネスの二極分化のお話
投稿者 SSN-K64
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登録日 2010年7月21日11時38分
私も彼は嫌いだけど(少なくとも政治討論に参加するにしては、態度が不真面目だし謙虚
でもないから)、十三郎クンの言いたいことって、文章や文体が下手くそで異様に分かり
難いんだけど、根が単純だから分からないでもないんだよね。だから、万一賛同者が出て
しまった場合に備えて、きちんと反論しておく。

現在の日本の銀行ビジネスに対する批判だけど、彼が社会派マスコミ人士を名乗っている
通りに、何でも黒白でレッテル付けたがる連中にとっては、それは当然のものなのだろう
。だけど、なぜ銀行と商工ローンや住専やサラ金が並存してたのか、それを考えれば多少
は納得もできるはずなんだ。彼らマスメディアの記者さん達の多くは、人文系(社会学部
とか)が多そうだから、プリンシパル・エージェント問題や逆選択などの情報の非対称性
に関する現代の標準的な数理経済学なんかよくは知らないのだろう。

金貸しの二極分化の意味とは、換金可能な実物担保を取って低利で貸すリスク回避のビジ
ネスと信用貸しで二つに一つは破綻覚悟で追い貸しもするリスク許容の高利貸しビジネス
との違いなんだ。前者は、勿論、銀行(や証券会社)などの預金保全を要する安全重視の
ビジネスで、基本的に無担保融資はしない。不況で担保価値が下がれば、すぐにも追加担
保(追証)を要求し、相手の信用不足が露呈すれば取引中止も辞さない。後者は、典型的
な街金(高利貸し)ビジネスで、長年のカンだけでなく大手は保険ビジネス並みのの確率
論で勝負する。要するに破産は日常茶飯だけど、破産してない連中から絞り取れれば、プ
ラマイゼロでOKとする、ある意味、保険型ビジネスなわけだ。

ここまでは従来の経済学(旧来の金融論)でも説明可能で陳腐な解説だけれども、スティ
グリッツらによって提唱された新しい金融理論では、この後者の保険ビジネスじみた確率
論の詳細な検討がなされているんだ。情報の経済学で研究された保険理論でいう「モラル
ハザード」や「不利益(逆)選択」「プリンシパル・エージェント(代理人)問題」なん
かのキーワードが頻出する。

そこで市場の二分割問題で重要なのが、「不利益選択」。これはノーベル賞受賞学者によ
る「レモン(不良中古車)の市場」を研究した古典的な業績が有名だけれども、この研究
で情報の非対称が極端な市場(要するに相対取引の一方が圧倒的に情報劣位にある市場取
引)では、市場そのものの淘汰がなされる(市場自体が消滅する)という帰結を得てる。
これこそ「ミドルリスク・ミドルリターン」市場の不可能性の問題なんだ。

なぜ、中間(ミドル)市場は淘汰されるてしまうのか?まずは銀行にとって顧客が信用で
きる場合、その顧客は既に安全融資を得られているはずで、担保のない(担保が既設定で
追加担保を出せない)新規融資希望者は、全て担保信用力の劣る顧客だと見なせる。従っ
て銀行は金を貸せない。ならば街金業者にとって、その顧客は、銀行融資を断られた他の
顧客と同様に、当たるか外れるかどちらか不明の不安定な顧客なわけだから、高利貸しは
当然になる。

ここでミドル市場を模索する新規業者(信金)が市場参入してきたら、どうなるだろうか
。信金は地場の情報通だから、ミドルリスクを選別できるとする。だけど、そもそも銀行
から排斥された顧客は、そうでない顧客と較べて破綻する確率が異なるわけではない。た
だ単に担保が不足してるだけだ。さらにミドルリスクとはいえ、担保不足で銀行から排除
された顧客は破綻すれば融資は全額焦げ付くケースが多い。ならば、個別の融資は全損を
見込まなければならなくなる。それだと、確率的に一律高利貸しをしなければ、損失リス
クを補填できない。だから、ミドル市場は淘汰され、全てが高利貸しビジネスに統合され
てしまうわけだ。

これは机上の空論ではなくて、経験的にも実証された理論なんだ。なぜそうなってしまう
かは、お金と商品の交換法則と景気変動にある。つまり、商品は景気が悪くなって売れな
くなるとすぐには現金化できないし、景気変動はまだ克服されていない社会病理だってこ
とだ。そういう環境下だと、担保能力の低い零細中小企業はすぐに資金ショートを起こし
て、黒字倒産を起こす。企業が倒産すると、担保不動産などの資産売却が連鎖的に増え、
それが益々担保価値の下落を生む。だから、不況下では狡すからい銀行ビジネスも多少は
回収不足が生じる。

だから、金貸しのミドル市場など、それこそ机上の空論なんだ。金貸しビジネスには融資
保全率が高い良質な取引と、それが高くは無い(それこそピンきりだが、大抵は損切りで
きずに悪あがきを続けるので、倒産してしまえば2割回収でも御の字なケースが大半)危
険な取引とに二分されてしまうわけだ。その線引きは、事業の内容(そんなもの、決定因
子が多すぎ運頼みで当事者を含めて誰も確実な評価などできない)でもオーナーの倫理意
識でもなくて、担保価値が健全で銀行融資枠に余裕があるかどうかなんだ。不況による少
々の値崩れが生じても、担保不足を起こさないだけの余裕資産のある顧客とそうでない顧
客。それに二分されてしまう。

これは、ある意味では情報の非対称の問題ではなく、情報が全く当てにならない市場の問
題だろう。倒産確率はともかく事後の事業精算による回収確率など個別では見分けがつか
ないから、担保の有無で選別せざるをえない。ミドルリスクとは倒産確率であって、担保
回収確率ではないんだ。だから、リスク選好が生じない。それは要するに、倒産確率の選
好による市場選別は機能しないってことだ。

この程度は現代の経済学では、学部レベルの常識であって、街金業者はともかく銀行ビジ
ネスを営むものが、これを理解していないほうがどうかしている。だからミドルリスク・
ミドルリターンの余地ありなどと強弁する論者は、所詮は街金レベルでしかないんだ。街
金レベルならば、10%の金利などといってないで、経験から導き出された15%やそれ
以上の高利貸しを実践しなければならない(だけど法定上限の金利15%が手数料にまで
拡張されたら、ほとんどのグレービジネスが破綻するのは確実だろう)。彼らは銀行から
取引拒否された担保不足の顧客しか相手にできないリスク許容ビジネスの実践者なのだか
ら。

それとは別に規模の選別に関しては、銀行にはほぼ厳密な階層(都銀→地銀→第二地銀→
信金→信組)があって、それでほぼ全てが網羅されているから、新規なビジネス・モデル
の介在する余地は元々小さい。それは非銀行の高利貸しビジネスにだっていえる。だから
売上げ金が10億円どうこうという十三郎クンの話は、それこそ妄想の産物(それか信金
は銀行ではないと言い出す金融のド素人か)なのだ。

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